アスベストだけが危険ではない

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アスベストだけが危険ではない

●アスベスト自体には毒性はありません

クボタ尼崎工場からアスベストが飛散して周辺住民に多くの中皮腫患者が出た事件が大きく報道された結果、社会的に“アスベスト”が大きく注目されました。その結果、“アスベスト”が毒物であると考えていらっしゃる方が多いのですが、実は“アスベスト”自体には化学的毒性は無いのです。

“アスベスト”には6種類あります。しかし、それ自体は私たちが生活している環境に普通に存在する岩石と同じ成分で構成されており、“アスベスト”そのものには化学的毒性はありません。中国産ギョウザに混入していたメタミドホスや、テレビドラマなどでおなじみの青酸カリなどの化学的毒物とは全く違うのです。

ここからは、“アスベスト繊維”と“アスベスト”と区別して認識して頂きたいと思います。この両者を区別していただくことは、これからご説明する内容を理解していただく上で非常に重要です。そして、“アスベスト問題”を正しく理解していただくのに役に立つと思います。

※ILO(国際労働機関)のアスベストの定義とは
「アスベストとは岩石を形成する鉱物の蛇紋石及び角閃石グループに属する繊維状の無機珪酸塩」


● 癌や中皮腫を引き起こす繊維状のアスベスト

アスベストの原石は普通の岩石です。アスベストは建材や接着剤に入れることで、耐火性、耐久性等があがるので、アスベストの原石を細かく砕き、長さを数十ミクロン、太さを数ミクロンにしたものがそれらに混ぜて使われてきました。

この加工された非常に小さいアスベスト繊維が問題なのです。

人間の肺では、酸素と炭酸ガスを血液と呼吸した空気の間で交換しています。その作業を行っている肺胞という部分は、気管支の先端にあり、直径が200~300ミクロンの風船状をしており、葡萄の房のような形で繋がっています。気管支から肺胞への入口の直径数十ミクロンと小さく、肺胞の中に入ったアスベスト繊維は、ウナギの寝床に入ってしまったウナギのように出ることが非常に難しくなります。

肺胞に入った繊維状の物のうち、綿、羊毛、紙などは生物由来の有機物なので、肺胞の中にいる白血球の一種マクロファージ(アメーバ状をした食細胞)によって分解されてしまいます。しかし、アスベストはマクロファージでは分解出来ず異物として認識すると共に情報を出し、あの鉱物繊維の周囲を取り囲み死滅してしまいます。

約30年前にポットとスタントンらによって、ラットの腹部に様々な繊維を入れて発癌性を調べられました。これにより、発ガン性は、繊維状粒子の形状、体内残留性、物質の表面活性の3つが大きく影響しているとわかりました。ポットとスタントンの研究によると、繊維径が0.25ミクロンで長さが20ミクロンの繊維状粒子の発癌性が強いという研究成果が発表されています。(ポット・スタントンの仮説)

これらのアスベスト繊維などの異物に対する作用に伴って生じる物質は同時に障害作用も合わせて持っており、このことが癌や中皮腫を発生させている原因と考えられています。アスベスト繊維などが癌を発生させる詳しいメカニズムと中皮腫がなぜ肺胞の外の胸膜に発生するのかについては現在も世界各国で研究が進められています。

● 繊維状の無機物は全て危険かもしれない

ここまで読んで頂いた方の中には、「アスベスト自体には毒性がない。それなのに危険ならば、その代替製品はどうなのか?」と素朴な疑問を感じるかたもいるはずです。

現在、代替製品として、ロックウール、セラミックファイバーやグラスウールが使われています。これらの製品が絶対に安全というわけではありません。ロックウール、ガラスウール、セラミックファイバーなどは、肺胞にまで入りにくくなるように、繊維の太さが3ミクロン以上のものを製造しているとされています。しかし、顕微鏡で見る限り細かい繊維も混在しています。

ですから、肺胞にまで入り込んでしまう寸法・形状の無機物繊維は、海外やWHOなどの国際的な研究機関の警告する報告書には総称して“Mineral fiber”とか、”Inorganic fiber”とう言葉が使われ、アスベストはその危険物の中の1つであるとして扱われています。

ですから、繊維状の鉱物はアスベストだけでなく、その代替製品のロックウール、セラミックファイバー、グラスウール等も絶対に安全とは言えないのです。